金属の熱処理

金属の熱処理

金属に熱を加えることで必要に応じた硬さを得ることができます。
こちらでは熱処理の違いを簡単に説明しています。

熱処理の概要

金属の熱処理では焼き入れと焼きなましがよく知られていますが、実はかなり複雑でいろいろな種類があります。
熱処理の基本は加熱してから冷却して材料の性質を変える事です。

熱処理によって金属の性質や状態を変えるとき、影響する因子は次の通りです。

  • 加熱温度(変態点の上か下かが最も影響しますが、さらに細かい温度制御が必要な処理もあります)
  • 加熱速度(一般に加熱はゆっくり行いますが、急加熱する熱処理もあります)
  • 保持時間(狙いの温度に加熱した後、その温度を維持し続ける時間)
  • 冷却方法(連続して冷却する場合、急冷後一定時間所定の温度を保持する場合、空冷、水冷、油、その他を使用する場合など、速度、段階、使用する冷却材の違いがあります)

表示した以外にも、「焼きならし」や材質別に特殊な熱処理が数多くあります。
熱処理の方法ごとの質別記号での示し方については、【JIS規格の読み方 調質編】の記事をご参照下さい。

焼き入れ(クエンチ・クエンチハードニング)

変態点を数十度上回る温度に加熱保持してから水や油を使って急冷する処理を焼き入れといいます。
焼き入れを行うと結晶粒が細かくなり硬くなりますが、割れやすく、脆くなります。必要に応じ、硬さを犠牲にして焼きもどし処理を行い脆さを改善します。

焼きなまし(アニーリング)

変態点を数十度上回る温度に加熱保持してから炉内でゆっくり冷却する処理を焼きなましといいます。
焼きなまし行うと結晶粒が大きくやわらかくなります。
変態点を上回る加熱を行う完全焼きなましに対し、変態点以下(再結晶温度)に加熱して行う応力除去焼きなましという処理もあります。

焼きもどし(テンパリング)

焼き入れを行った材料は脆くなるので、変態点を下回る温度に再加熱してねばり強さを出す処理です。
温度や方法によって低温焼きもどし、高温焼きもどし、焼きもどし硬化、の3種類があります。